キッチンスタジオを囲む家
所在地: 葉山町長柄
規模: 3LDK
夫婦 + 子ども1人
竣工年月日:2018年1月
設計期間:3ヵ月
施工期間:3.5ヵ月
メンテナンス状態の良い中古物件に出会うことはまさに運命であり、まるで「この家をこれからもよろしく」という前のオーナーからのメッセージのよう。住み慣れた葉山で新たな住まいを探す中で、耐震補強工事や屋根・外壁のメンテナンス工事済みの良好物件にSさんご家族は出会いました。延べ床約33坪の空間で目指したのは、長さ3mの存在感のあるキッチンを有する“キッチンスタジオ”(パブリックゾーン)を囲むように、ご夫婦・お子さん、そして親のプライベートゾーンをそれぞれ存在させ、住まい方に多様性を持たすこと。木張りの既存壁への塗装により明るさとメリハリを持たせ、梁をあらわしにすることによる空間の変化など、既存の要素を積極的に活かし、古さと新しさのMIXだからこそ生まれるスタイルのある家が実現しました。[ 設計デザイン:エンジョイワークス、施工:ワイズホーム ]
キッチンスタジオには長さ3m、奥行90cmという存在感のある人工大理石カウンタートップの造作キッチンが空間を演出している。カウンター下には業務用冷蔵庫が入るように計画され、作業性を高めたものとなっている。さらに床材も無垢フローリングと塩ビタイルを使い分け、デザイン性かつ清掃性を考慮したスペースである。南側の掃き出しサッシからは植栽越しに豊かな陽が差し込む空間となった。
リビング空間にはコーヒーカウンターが計画されており、カウンターや棚の高さ、壁付け照明の位置などの使い勝手は、施工中の現地にてSさんに体感してもらい最終決定を行った。コーヒーを淹れる時間を大事にするSさんならではのオリジナルなスペースである。
2帖もの広さを確保したトイレ空間には、ゆったりとした手洗いが備わり、北側既存の窓からは日中は一定の明かりが確保できている。さらに窓まわりのやさしいグリーンやフラワーからはSさんの暮らしぶりが伺える。
リノベーションによるメリハリが随所にみられる玄関ホールや元和室。ホワイト色で塗装するというシンプルな手法で既存木部を主張させ、玄関ドアや階段の印象も向上させた。元和室は畳から無垢のフローリング張りにしただけでも空間の演出となっている。さらに床はSさんによるDIYでオイルを施した。
【BEFORE】築40年の木造2階建ての一軒家は、当時の主流の組み合わせキッチンが備わっているなど一見するとフツウの家。でも塗装可能な木張りの壁や、キッチンが元々2か所存在する点など、2世帯居住も考えていたSさんが求める要素を持ち合わせる住まいであった。