それぞれの好きな時間を包み込む家
所在地: 鎌倉市長谷
規模: 4LDK
夫婦+子ども2人
竣工年月日:2017年7月
設計期間:4ヶ月
施工期間:6.5ヶ月
賑やかなメインストリートから辻を曲がって山の懐へ入ると、嘘のように静寂に包まれる長谷。音楽を愛し、自らも音楽制作を嗜むIさんは、その厳かな雰囲気が気に入り居を構えることにしました。4人の家族それぞれに趣味があり、それぞれが好きな時間を過ごすための上質なプラットフォームでありたい、というのがI邸のコンセプト。1階に設けた1人1人の部屋では、隣地の素晴らしい庭を眺めながら誰にも邪魔されることなく自分の時間を過ごすことができ、2階の広々としたLDKでは、家族みんなが集まってゆったりと団欒を楽しみます。シンプルな構成やフォルムでありながら全てにおいて素材のクォリティを追求し、洗練が香り立つ家となりました。[ 設計デザイン:エンジョイワークス、施工:ワイズホーム、写真:
東涌写真事務所 ]
アイアンの玄関ドアは、表は黒、室内はモスグリーンに塗り分け、光による陰影を楽しめるようにした。アイアン塗料によるムラ感のある特殊塗装は鎌倉の特殊塗装のプロ集団「
COAT」によるもの。グレイのタイルをヘリンボーンに張った玄関の床と、室内階段の上り口の壁のヘリンボーンとが対になっている。
1階の廊下に沿って家族1人1人のための個室が並ぶ。室内の壁には厳選した微粒子の珪藻土を塗り、フローリングにはブラックチェリーの1枚ものの無垢材を使用。赤みのある深い茶色と繊細な木肌の表情が美しい。音楽を楽しむご主人の個室には防音性を持たせ、シンプルなデスクや棚も造作した。
2階のLDKの床にもブラックチェリーの無垢材を惜しげも無く用い、こだわりのオーディオ類とワインセラーを収めるための棚は、ブラックウォールナットでオリジナルに造作した。隣地の緑を絵画のように切り取る窓と珪藻土の白い壁との対比が映える。正面の扉の奥にはバスルームがある。
くつろぐ家族の姿がよく見える位置に設けたキッチン。天板には天然石を用いている。カウンター部分にはヘキサゴンの白いタイル、背面の作業台の壁には長方形の白いタイルを貼って変化を持たせた。1つ1つののディテールが選び抜かれたものであるにもかかわらず何かが悪目立ちすることなく、アイアンの黒、戸棚の深い茶、窓の外の緑との組み合わせの中で調和し、全体として上質感を醸し出している。
シンプルなこの家の中でアクセントとなる水回りには、質感豊かな深いグリーンのタイルを大胆に使用。光の加減でさまざまなトーンの輝きを楽しめる。遊び心を加えつつも上品さを損なわないように仕上げた。浴室から通じるインナーバルコニーも、露天風呂のような贅沢な趣を添えている。