スタイリングと塗装のMagic
所在地: 逗子市小坪
規模: 3LDK
夫婦 + 子ども1人
竣工年月日:2016年7月
設計期間:2ヶ月
施工期間:1ヶ月
エーゲ海の島々を彷彿とさせる白い外壁とオレンジの瓦屋根が連なり、敷地のあちこちに鮮やかな花が咲き乱れる瀟洒なメゾネットマンションの一室を、間取りや設備はそのままに、床材・インテリアのスタイリングと、壁・既存建具の塗装によって、全く違う空間へと変貌させました。南イタリアの流れを汲んだ、元の木部やタイルの赤味がかったトーン、職人の手仕事を思わせるデコラティブな意匠が、グレイを基調としたシックな色とエイジングを感じさせる質感の特殊塗装で覆われることで、モダンでありながら仄かな温もりが息づくニュアンスのある空間に。そこへシンプルかつアートのような存在感のあるインテリアを配し、時間も空間も飛び越えた美しさを持つ居住空間が出来上がりました。[ コーディネート:エンジョイワークス、空間ディレクション・インテリアスタイリング:
石井佳苗、カラーコーディネート・調色・塗装・左官:
COAT KAMAKURA 、写真:
東涌写真事務所 ]
20帖を超える日当たりの良いリビング・ダイニングルームの床はチーク材に張り替え、奥の壁は一面に収納棚を新たに造作した。ドアは元のままだが、赤味を抑えた渋い茶色で塗装しスマートな印象にチェンジ。余計な家具を排したシンプルな大空間の中で、セルジュ・ムーユの照明と、ソファの黒が引き立つ。
キッチンは元の設備を生かしており白の天板も木部もそのまま。収納扉の取っ手を真鍮のものに取り替えている。しかしこの空間の印象を大きく変えたのは、何と言っても床のタイルと壁の左官だ。フローリングだった床を6角形タイルに変更。これをテラコッタ色などでなく、濃淡2色のグレイにしたことで洗練された雰囲気に。また、壁はグレージュのモールテックス(モルタル風左官材)で質感豊かに仕上げた。各面の素材感がよく表れたナチュラルかつ大人っぽいキッチンが出来上がった。
クリアガラスで隔てられたバスルームとパウダールームは、この家の中でも最もドラマティックにイメージが変わった場所の一つ。アンティークのような洗面台は実は元のまま、フローリングだった床にはモノトーンのタイルを市松に貼り、壁はグレイのモールテックスでクールな印象に。トイレの隣に天井までの高さの収納棚を造作し、メタリックなグレイをエイジングを感じさせる手法で塗装している。ドアも元のままを塗装しノブをシルバーに取り替えた。パウダールームのイメージが変わったことによって、隣接するバスルームは全く手を入れていないにも関わらず、今までとは違ったモダンな空間に見えてくる。
2階の床は表情豊かなラフメープルのフローリングへチェンジ。自然光がたっぷりと入る一画に、洋裁や絵がご趣味の奥さまのためのアトリエを設け、その部分の床だけ大判のタイルを敷き詰めた。寝室の壁は落ち着きのあるトーンのグレイで塗装し、クローゼットの既存扉はグリーンのアイアン塗料で色むらを出して仕上げ、エイジングのニュアンスを加味した。
[ BEFORE ] 元の室内は1階も2階も同じ素材のフローリング。ドアや建具の木部もやや赤味がかった色合いだった。キッチンの壁には絵柄のあるベーシュのタイルが貼られ、パウダールームの壁もバスルームと同じようにタイル貼りだった。