フツウの家をスタイルのある家へ
所在地: 鎌倉市岩瀬
規模: 3LDK
夫婦+子ども1人
竣工年月日:2016年9月
設計期間:3ヶ月
施工期間:4ヶ月
1970年代~80年代、団塊世代の住宅需要に合わせ、ハウスメーカーによって数多く建てられた家。社会の世代交代が進む中、それらの家は現在の子育て世代が最も手に入れやすいリノベーション素材のひとつかもしれません。一見個性とは無縁に思えるこのタイプの家も、内部デザインや外観へのちょっとしたアイデアによって、見違えるようにスタイルのある家へと生まれ変わらせることができます。土地として販売されていた築37年の建物を購入、しっかりと構造補強を施し、既存空間を生かしつつも大胆に壁や床を外して光を取り入れ、新しいライフスタイルに沿った家へと改築しました。合理的かつ豊かな創造性でスマートにリノベーションを成功させた好例です。[ 設計デザイン:エンジョイワークス、施工:ワイズホーム、写真:
東涌写真事務所 ]
日当たりと眺望の良い2階にLDKを設置。もとは小さな3つの部屋に仕切られていたが、大胆に壁と柱を取り払い一続きの空間に。失った分の耐力は太い筋交いや梁を入れて補っている。このように、それらが室内に露出する場合もあるが、リノベーションの「らしさ」と捉えられれば個性に変わる。
玄関は既存の枠組みを塗装でチェンジし、扉だけを新しくした。以前は暗かった1階に、2階の床の一部を強化ガラスにすることで光を取り入れ、吹き抜けのようなユニークな玄関ホールが完成した。
2階奥の和室はフローリングに張り替え、引き戸を閉めればゲストルームとしても使えるスペースに。ふだんは戸を開け放ち、LDKから続く広々とした空間を楽しめる。特に日当たりの良いこの場所にハンモックを吊るして寛ぐのが施主Sさんのお気に入りだ。山側の窓の外にはデッキバルコニーを新設した。
1階には2部屋分が一間になった広い主寝室を設けた。壁は施主自身が親族や友人を集めてDIYで塗装、家への想いや愛情が詰まった空間に仕上がった。扉も外国で使われていたアンティーク品を施主自身が調達、その特殊なサイズに合わせて枠を造作した。扉のないウォークインクローゼットが隣に続き、玄関の正面に当たる一番奥のスペースは愛用の自転車やアウトドアのギアなどを収納、生活導線を考えた無駄のない配置にしてある。
【BEFORE】リノベーション工事では、予算の中で重要度の高いものから優先的に取り組んでいく必要がある。基礎や躯体の強化は建物の安全性や寿命に直接響くため、目に見えない部分ではあるが最重要だ。S邸ではもとの土敷にしっかりとコンクリートを打設し、地面からの湿気を防ぐとともに遮熱性も高めた。一方で窓は既存窓の枠組みを活かしたカバー工法を採用することでコストを抑えている。このようにメリハリを効かせることが、リノベーションを成功に導くポイントだ。