The Canvas Hayama Park
所在地: 葉山町下山口
規模: 24坪/27坪/30坪
家族構成:宿泊施設
御用邸と海の近く。「The Canvas Hayama Park」の土地はエンジョイワークスが8年前よりお預かりし、長きに渡ってこの場所にベストな形を模索し続けてきたプロジェクトです。2015年春には葉山芸術祭にて「葉山小屋ヴィレッジ」を開催し、町内外から訪れた大勢の人々と新たなコミュニティを創出しました。そしてこの度、事業主さまと共に企画を進め「暮らすような滞在」をコンセプトとする宿泊施設が完成。全く内装の異なるスケルトンハウス3棟と2つの小屋、地域にも開かれたデッキスペースからなるヴィレッジスタイルの当施設は、一般的な住宅以上にこのエリアに馴染むまちなみの一部となっています。[ 2016年11月竣工、インテリアスタイリング:
石井佳苗、アイアンらせん階段・外部サイン:
橋本大輔/ヴェルクスタットヴァル、アイアン照明フレーム:
堀場央/アンクルムーブル、植栽・外構:
hondaGREEN、家具制作:
WRIGHT、施工:ワイズホーム、写真:
東涌写真事務所 ]
葉山は昔から多くの別荘が建つ場所であり、アート&クラフトやアールデコなどのデザイン思想が日本的な洋風建築としてうまく咀嚼されてきたエリアだ。3棟それぞれ異なる趣向で仕上げた室内は、いずれもモダンデザイン黎明期の人物・思想が、意匠の分野が確立していない素地(キャンバス)のところから自らの思考を開拓していったその感覚に立ち返り、発想の端とした。葉山という地域の文脈とデザインにおける文脈を同じように遡り、その時代に少し迷い込むような仕掛けだ。
「Akatsuki」と名付けられたこの棟は「イームズ自邸のアルコーブ」、そして「犬と暮らす」をキーワードに空間づくりを行った。ベージュ系のトーンを基本に木や革の自然素材、アースカラーの石材など、ミッドセンチュリー的なしつらえの中にプリミティブな要素を調和させた、暖かみのある仕上がりとなった。この棟のみ愛犬と共に滞在できる。
「Unkai」という名のこの棟は3棟の中央に位置し、南側に大胆な吹き抜けを設け、グレー系のトーンを基本として、派手すぎずくすみすぎないポイントカラーを採用している。「バウハウス」が設立された「1919年に立ち還る」ことを出発点に、シンプルながらデザインを感じさせる、自然なクールさが漂う空間に仕上がっている。キッチンカウンター等の水回りは3棟すべて色味の異なるモールテックスで造作した。
「Unkai」の2階には2つのベッドルーム、そしてライブラリーを設けた。豊かな自然に包まれたこの地での滞在において、室内でゆったりと過ごす時間もまたセンスを覚醒させるものになるように。
「Minamo」という名のこの棟は、メキシコの建築家「バラガン」が用いたビビッドな色使いに着想を得つつも、海の近くであることを全身で感じられるような「ブルー」をエントランスから大胆にあしらっている。壁にはフォトグラファー伊藤資人導(いとうしとみち)氏による葉山の写真を展示。3棟すべてに設置されたらせん階段は、葉山在住のアイアン作家によるオリジナルで、各棟の内装に合わせて微妙に色合いと手摺りのフォルムなどのディテールが異なっている。
「Minamo」の2階には、エントランスのブルーと補色関係になるテラコッタ色を採用して全体のバランスを整えている。ファミリーでの楽しい滞在をイメージし、壁にはボルダリングを設置。インテリアには鮮やかな赤などエスニックのスパイスを加味しながらも、あくまでモダンで開放的な、遊び心を最も感じられる空間となっている。