インタビュー
多くの余白を残し、住みながらセルフビルドした家。家はセルフビルドでどこまでつくれるか?
公開日:2018/03/01
所在地: 葉山町下山口
規模: 3LDK / 89.44㎡
家族構成:夫婦 + 子ども1人
長野から葉山へ
地方への移住が注目される今、そのUIターン先としても人気の高い長野県から、神奈川県三浦郡葉山町に家を建て引っ越すことにしたTさん一家。「長野の前は横浜に住んでいましたし、子どもが生まれたのを機に海の近くに住むのもいいかなと思って。住みたいエリアに強いこだわりはないんです」とTさんはおっしゃいます。ボルダリングの壁の設計デザイン業を自営しており、どこにいても自分の身があれば仕事ができるというのも、Tさんが住む場所に縛られない理由の一つかもしれません。
「海の近く」で「広々とした開放感のあるワイルドな土地」とイメージしながら、長野県から出向いて、エンジョイワークスの不動産営業 小山と一緒にざっくり三浦半島の先の方から土地を見始めたTさんと奥さま。数回目の内覧で葉山町下山口のこの土地に立った時、なんとなくここかな、と感じたそうです。子育てをするにあたり、海や山の近さといった自然のボリュームと、地域コミュニティやカルチャーまで含めた生活のインフラとのバランスが取れている、というのが決め手だったそう。
そんな下山口にTさんと奥さまが建てたスケルトンハウスの最も注目すべき点は「家のかなりの部分をセルフビルドでつくっている」という所です。2017年7月にお引き渡しをしてから数ヶ月後の冬の日、Tさんから家の中がだいぶできてきたとのご連絡をいただき、担当設計士の海野とともにインタビューに伺いました。
世の中に数ある住宅の中から、なぜスケルトンハウスを選んだのでしょう?
Tさん:「それはもう“スケルトン”だったからですねぇ(笑)。何も手を加えられていない空間だからです。リノベーションを新築でやるというか。あるものを壊してやるというより、何もない所に1から自分でつくることができるからです。もともと自分の家は自分で建てたいと思っていたんですが、調べても調べても、お風呂をどう付けるのかとか、水や電気をどう引いてくるのかとかは、分からなかったんです。自分で調べて分からない所は、調べようがない所だなと。スケルトンハウスはそういう大事な所はすべてやってくれているので」
設計士 海野:「仕上げで見える部分はやろうと思えばすべて自分でできるんですよ。壁も床もシナ合板でやっておけば、つくっていく過程でなんとかなる。Tさんのスケルトンハウスで僕が大事にしたのは、設備に関する所は責任を持ってしっかりとやって、あとはできるだけ素地で渡す、ということでした」
素地としてのスケルトンハウスが完成し、弊社からTさんへお引き渡しをしたのが夏前くらい。その後、長野から葉山へ引越し&セルフビルドを繰り返し行いながら、Tさん夫妻は家の中を2人でつくっていきました。1階の中央にあるゲストルームを拝見すると、設計図面にはなかった小上がりができていました。
Tさん:「引っ越してみると荷物をしまう場所が足りなかったので、小上がりをつくってその下を収納にしたんです」
海野:「必要だからつくって、また次のことをするという。生きてる、というか人間的ですよね(笑)」
Tさん:「優先度が日々入れ替わるんです。2階のバルコニーの手すりの板も、住んでるうちに必要な目隠しだと気がついて、まず必要最小限の所まで付けました。やるとまた別のことが出てくるので、途中までやってまた別の所をやるという感じです。長野でも日曜大工はしていて、自分で家をつくることはずっとやりたいと思っていたんですよね。自分の家だから好きなだけネジ打ったりできるのがやっぱり良いです」
なんともライブ感あふれる進行状況、そのプロセスを楽しみながら住んでいるという感じですね。でも、その都度必要なことを付け足していくと、全体感がチグハグになったりしないのでしょうか?
Tさん:「全体は奥さんがプロデュースしてるんです。これは合わない、とか言ってくれます」
奥さま:「もともとインテリアが好きなんです。彼がこうやりたい、というのがあるんですが、それに照らしてそれは合わない、という感じで言っています。この家のコンセプトが“無骨な家”なんですよ。2人とも工業的なものが好きだし、床がデコボコしているのとか、所々雑な部分があっていい。汚れてても欠けてても、液ダレしたりかすれたりしてても、それが合う家がいいね、と。この家はいつまでも完成しないんじゃないかなぁ、すでにデッキに小屋をつくりたくなっていますし(笑)」
奥さまから見て、スケルトンハウスの良い所は?
奥さま:「生活をしていてここに必要だから付ける、ができる所です。事前に決める方が難しい!先に全部決められる人はすごい。置く物も決まっていないのに、棚の高さとか分からないじゃないですか。スケルトンハウスだと先に全部決めなくていい、後から決められるのがいいです。失敗して付け直したりして、壁に穴が空いていてもいいんです」
現在もセルフビルドが日々進行中ということですが、完成度はどのくらいなのでしょうか?
Tさん:「気持ちよく住めるを100としたら、50%くらいですかねぇ。まだ置く所がない物もありますから」
海野:「珍しい! お引き渡し後に完成度50%という人も(笑)。一般的には引き渡しの時に責任が移行するので、そこからセルフビルドした部分については施主さんの自己責任になります。ご自分で家づくりを勉強するってすごいですよね」
セルフビルドしていて、ここは難しかったという所はありますか?
Tさん:「フローリングも難しかったですが、やはりドアが難しかったです。自分たちで購入したのが海外製のラフなドアだったからなんですが、開口部のサイズと合わなくて1階の寝室のドアは周りにいっぱい木片を詰めました(笑)。それに比べて2階のリビングのドアはプロに施工してもらったからピッタリ。やっぱり寸法とかは難しいですね。クオリティを求めるのなら間違いなくプロにやってもらった方がいいですよ」
逆にセルフビルドの利点は?
Tさん:「やっぱり好きな時に付けられたり、安い材を買ってきて加工できたりする所ですよね、その時の予算に応じて。キッチンの吊り棚とかキッチン下の棚とかこういうのは自分たちでやっています。玄関の土間にも本当はタイルを貼る予定なんですが今はとりあえずベニヤのまま、まあこういうのもいいかと(笑)」
自分の家をセルフビルドするにあたって重要なのは、仕上がりのクオリティを優先するのか、自分の都合に合わせてプロセスを楽しむことを優先するのか、のジャッジをどのラインで行うのかということかもしれません。そのラインの引き方は、施主さんが求める家に合わせてさまざまなのでしょう。
設計士から見たセルフビルドの家
一般的には設計士の仕事としては、完成形の家を設計して完成させてからお引き渡しすると思いますが、今回のTさんの家のように、お引き渡ししてから施主のセルフビルドが入った家を訪ねてみて、設計士 海野はどんなことを感じたのでしょうか?
海野:「家づくりが好きだったらこんなにできるんだ!と素直に感動しました。ちょっと面接みたいでドキドキしましたよ(笑)そして、住みやすそう、と感じました。生活の中で出てくる問題を解消しながらつくっているから、住みやすい家なんだなと思いました。僕らは住まずにつくるから。僕じゃ実現できなかった家です」
最後に、Tさんはお仕事柄、大工仕事に必要な工具もいろいろ揃えてあるということを付け加えておきましょう。ボルダリング壁の設計デザインやサンプル制作の過程で集まった丸ノコや電動ドリル、水平器、鉄のレールも切れるヒップソーなど、道具が増えたことでつくれるものがパワーアップしたそうです。思い立った時にすぐ加工できる道具があり、その扱いにある程度慣れていることも、本格的なセルフビルドでは欠かせないこと。
こうした大工道具を、たとえば仲間同士で共有できるとセルフビルドの範囲が一気に広がりそうですね。スケルトンハウスや中古戸建のリノベーションなど、エンジョイワークスで家を建てた施主さん達でつくるコミュニティ「施主クラブ」が2017年に発足しました。弊社で家を建てるなら、建てる前も、建てている最中も、建てた後も、余す所なく楽しんでいただきたい!そんな想いから始まったコミュニティです。ご興味のある方は、物件探しや家づくりのご相談の過程で、ぜひ弊社スタッフにお尋ねくださいね。
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