BLOG
地域と旅人をつなぐ、築130年の宿「土肥邸」再生プロジェクト – お宿編 –
公開日:2024/11/13
鎌倉の設計事務所が手掛ける、築130年の古民家「土肥邸」のリノベーション事例。伝統構造も活かした設計で、地域交流と宿泊が楽しめる温かい空間に再生。広い土間やカフェも備え、富山の郷土料理を提供する貸し切り宿です。
「こえつち」に込めた想いとプロジェクトの背景
富山県立山町にある土肥邸の再生プロジェクト、第2話です。
このプロジェクトは「こえつち」という愛称で親しまれています。土肥邸の「土肥」の文字を入れ替えると「肥えた土」。その意味には、「肥えた土」を育て、地域の交流が循環し、新たな実りが生まれる拠点にしたいという願いが込められています。今回は、その「こえつち」の宿泊スペースに焦点を当て、空間づくりの裏側をご紹介します。
農作業小屋から宿泊スペースへ
宿泊スペースとして再利用した部分は、もともと農機具を収納する倉庫として使われていました。しかし、後から増設されたと思われる床は、高さが不規則で、時代の異なる梁が複雑に入り組んでいました。解体を進める中で、新旧の梁が顔を出し、この空間に長い歴史が刻まれていることを再認識しました。
プロジェクトを進める中、現地で解体状況を確認していた際に、こえつちメンバーである大久保さんが一言、「この梁を見えるようにして、天井の高い部屋にしたい」と提案してくれました。この言葉は、宿全体の空間づくりの方向性を大きく変えるきっかけとなりました。
天井を高くする決断とその工夫
もともとは天井の高さを2.4mに設定していましたが、大久保さんの提案を受けて3.2mに引き上げることに。これにより、梁をきれいに見せることができ、宿の空間に奥行きと開放感が生まれました。変更に伴い、排煙設備として必要な窓の追加や設計図面の修正など、多くの手間がかかりましたが、やってよかったと心から感じています。
この変更によって、ただの四角い箱ではなく、過去の時間が静かに刻まれた梁を眺めながら眠れる空間が完成しました。この場所でしか味わえない特別な体験を提供する部屋ができたのです。
メンバーのアイデアが息づく空間
パウダーコーナーは、藤森さんと女将の川口さんから「落ち着いてお化粧ができるスペースがほしい」というリクエストで設置。前田さんのこだわりで、十和田石を使用したお風呂や、分厚い欅の洗面カウンターも宿の見どころになりました。また、廊下には自然光を取り入れたいという設計チームのアイデアが採用され、その具体的な施工は工務店の中島さんに支えてもらいました。
こうして、プロジェクトに関わったメンバー全員が、それぞれのアイデアを持ち寄りながら、この宿を作り上げました。完成した土肥邸は、まさに「自分たちの施設だ!」と胸を張って言える場所になったと思います。
地域の温かさと時の流れを感じる場所
「こえつち」プロジェクトの宿泊スペースは、歴史を感じさせる梁や、自然素材を取り入れたこだわりの設計によって、ただの宿泊施設を超えた特別な空間となりました。関わったメンバーのアイデアや情熱が詰まったこの宿は、訪れる人に地域の温かさと時間の流れを感じてもらえる場所となっています。
詳しくお話を聞いてみたい、知りたい方は下記までお問い合わせください。
■家づくりって最高にクリエイティブで面白い。
新築もリノベも。
鎌倉・湘南エリアを拠点とするエンジョイワークス一級建築士事務所が
クリエイティブな家づくりをサポートします。
https://enjoyworksdesign.com/
■お問い合わせ:
お電話(
0467-53-8583)
お問い合わせフォーム