スケルトンハウス
美しくシンプルな外観|スケルトンハウスって…その9
公開日:2025/09/08
スケルトンハウスの外壁は木張りです。まちを歩いて住宅を見渡すと、木張りの外壁を持つ家は意外と少なく、とても珍しいことに気付くはずです。
では、なぜスケルトンハウスは木張りなのか?そこには、私たちが込めた特別な意図や思いがあります。今回は、その理由を少し紐解いてみたいと思います。
風景にすっと馴染む、普遍的なハコ
最初の答えはシンプルです。風景に溶け込むから。
木は光や陰、湿度や季節の色に素直に反応して表情を変えます。海辺でも山あいでも、ぎゅっと詰まった住宅地でも、悪目立ちせずに「そこに前からあったみたいに」収まってくれる。珍しい素材使いであっても、街並みの中で静かに存在できるのが木張りの強みです。
私たちは装飾で目立たせるのではなく、形はきっぱり、素材で語るという姿勢を大切にしています。だからこそ、流行に振り回されない普遍性が生まれ、住み始めてからも時間が外観に奥行きを書き足していく。――この「馴染む力」が、木張りである理由の出発点です。具体の素材選びや仕上げは、次のパートで。
素材と仕上げ――国産杉×縦張り×ウッドロングエコ
使うのは国産の杉。厚みはなんと3センチもあります。張り方は縦張りで、水が下に抜けやすく雨仕舞いも良好。見た目はシンプルでも、裏側は通気や納まりにちゃんと理屈があります。仕上げは「ウッドロングエコ」。塗った瞬間から“作り込みすぎない”自然なトーンで、木目はそのまま、耐久性はしっかり底上げ。明るめでも渋めでも、周辺の屋根材や外構と合わせやすいのもポイントです。
経年美化は“楽しむ”もの
木の外壁の本番は、むしろ住み始めてから。最初の数カ月で色味が落ち着き、1〜3年かけて深まり、やがて銀鼠色へ育っていきます。海風の強い場所は変化が少し早め、内陸はゆっくり。どちらも正解です。これは劣化ではなく、その土地の時間をまとった“育ち”。庭の緑や季節の光も映り込み、同じ家でも日々「今日の顔」がある――そんな変化を暮らしの楽しみとして受け止めます。
メンテは“ちょい足し”――社寺仏閣と同じやり方
手入れは肩肘張らずに。日射や雨当たりが強い面からやせてくるので、気になるところだけピンポイントで張り替えます。全面やり替えは基本ナシでOK。交換直後に出る色差も、数カ月で周囲に馴染みます。年1回の目視チェックと簡単な清掃、状態を見て板を足していく―いわば昔ながらの社寺仏閣と同じ手法で、傷んだ材だけを差し替えながら寿命を伸ばす考え方です。「直しながら長く使う」文化を、住まいにもそのまま。
風景になじみ、時間とともに表情を深め、必要なところだけ直して長く使い継ぐ。スケルトンハウスの木張りは、家を“完成品”ではなく“育てる相棒”にしてくれる外観なのです。