設計士 門田(以下、門田):「打ち合わせで最初に”家の断面図”をいただいたんですよ。これは滅多にないことなんです。間取り図はありますが、断面図とは。”空間”を大事に考えていらっしゃるんだな、と思いました。コンセプトも『外と中がつながる家』でしたね」
この断面図は奥さまのMさんが描かれたものです。こと家のデザイン面においては、グラフィックデザイナーでもある奥さまが中心となって進めていきました。
Mさん:「子どもの学び場をつくりたい!と言い出したのは主人なんです。長年教育に携わってきた人なので、施設の理念や教育方針なんかは主人がメインで考えることになります。ここに住むことになる息子は料理人でもあるのでキッチンのアイデアや料理のこと、運営のことなど。となると私は、自分の得意を生かして家のデザインやグラフィックの方で協力していこうと思いました」
Mさんは、Hさんと息子さんのアイデアを一つの「家」という形にしていくために、さまざまな空間やディテールの写真、想いやニュアンスを表現した文章などをスクラップブックに集め、それを門田と共有しながらスケルトンハウスをつくっていきました。実はMさんとのこの作業が、現在エンジョイワークスが提案しているお客様主体の家づくりをサポートするためのコミュニケーションツール「家づくりノート」につながっていると門田。
*家づくりノートとは?
門田:「施主さんの想いが分かると僕らもより精度の高い提案をすることができますし、家を施主さん自身のものにすることができるんです」
Hさん:「家が出来上がってしまうと忘れがちだけど、初心というか、なんでこうしたのかっていうその時の想いが大事だね。それを持って家をつくっていくプロセスが楽しいんだよね」
門田:「そういうツールがあったらいいね、というところから『家づくりノート』が始まったんです。Mさんからお申し出いただいて、模型も作りましたね」
Mさん:「そうそう、階段てこうやってつくるんだぁとか、面白かったです」
門田:「この模型はHOUSEで1階と2階まで一緒に作ったのですが、その後Mさんがご自宅でデッキやルーフバルコニーまで作って完成させたのには驚きました!嬉しかったですね、相当想いがあるんだなと。その模型をまだ更地のこの土地に置いて、陽の入り方を一緒に確認しましたね」
Mさん:「窓の高さを現地で確認したかったんです。冬でも陽が入ってあったかいのがいいと思って。結局、西の窓を10cm下げたりしました。ワンポイントで色を入れることにした壁も、模型にいろいろ貼ったりして色を考えました」
門田:「そうやってボロボロになるまで使い倒すのが、模型の正しい使い方です(笑)」
Hご一家は、室内の天井や壁の塗装もDIYで行いました。初日は塗装の心得がある不動産営業の原を先生に、門田や角も一緒にペンキ塗りに参加。その後も塗り終わるまでに親族や友人などたくさんの人がお手伝いに来てくれたそうです。仕上がりは、工務店の人からもお墨付きをもらうほどの完成度。
門田:「Hさんご一家には、コンセプトづくりから最後の塗装まで、家づくりのプロセスをフルに体験していただいたと思います。塗装も自分ですることで、汚れてもリタッチできるし、メンテナンス意識も自然に湧くようになるんですよね」